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75歳

もうしばらく前の話だが、親しい友人でもあるギャラリーディレクターのAとお昼を食べにレストランに入ると、Aはひとりでテーブルにいたヘルムート•ニュートン氏を目ざとくみつけて、一緒にしようと彼を招いて三人でランチをとることになった。そのときはもうニュートン氏とはロンドンで同じギャラリーになっていたが、ぼくはそれまで彼とは一度も面識がなく、その時が初対面だった。
白いスカーフを無造作に首に巻き、黒々とした豊かな長髪、つやのある顔、どう見たって彼が言う75歳には見えなかった。その頃50代のぼくは、「これならあと20年も仕事が出来るんだ」、「75歳でこれなら素晴らしいな!」心底そう思った。そのときからぼくの中には、75歳というはっきりした目標ができたのだ。それから9年後、2004年に心臓発作で亡くなる最後迄、ヘルムート•ニュートン氏は写真家としてバリバリの現役だった筈だ。

その75歳まであと5年になった今、果たしてそこにたどり着けるかどうか確たる自信はないが、もしそれが達成できたら、次は10歳年上の大先輩川田喜久治さんの80歳を目標にしようなんて思っているのだが、そう上手く行くかどうかは誰にも分からない、まあケ•セラ•セラなのだ。
ぼくがオリジナルプリントというものに執着し始めた頃、まだ虎ノ門にあったギャラリーPGIで、川田喜久治さんのプリントを知り、どうしても直接見たい欲求に駆られ、あるとき何の面識もないのに電話をしてその旨お願いをすると、実に快くご自宅でその素晴らしいプリントを拝見することが出来た。どこの馬の骨かもしれない若造に、丁寧にプリントを見せてくれた氏の好意は、あの頃の写真への熱い思いとともに、ぼくの心の中にいつまでも大切にしまってある。

最初で最後のニュートン氏との昼食から20年、あっという間に時間は過ぎ去ってしまった。これから先はもっともっと時の流れは早くなるに違いないが、あと5年経ったらまたあの昼食の時のことを思いだしてみようと思う。
by b-road | 2014-02-03 12:23 | Trackback | Comments(34)
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Commented by snapshot0329 at 2014-02-03 17:42
大変興味深く読ませて頂きました。
歳を取るという事を考えさせられるとともに(私はまだ41の若造ですが)、セイケさんには是非90になっても100になっても現役で写真をとっていて頂きたいと願っております。
Commented by 信蔵 at 2014-02-03 19:37 x
セイケさん、お誕生日おめでとうございます。とうとう大台!どうか末長くお元気でいてください。そしていつまでも越えられない師匠でいてください。
Commented by yutaka at 2014-02-03 20:06 x
是非、目指してください。私もセイケさんを目標に頑張りたいと思います。
Commented by yutaka at 2014-02-03 20:08 x
是非、目標に向かってください。私もセイケさんを目標に頑張ります。
Commented by b-road at 2014-02-03 21:04
snapshot0329さん、ありがとうございます。
90というのはとてもとても無理なターゲットですが、
なんとか75まではと思っています。
これからもしばらくはよろしくおねがいします。
Commented by b-road at 2014-02-03 21:14
信蔵さん、誕生日と今日のスレッドは全く関連はありません。
目下の都知事選で、連日頑張っている76歳の細川さんと72歳の小泉さんの両元首相の歳を考えているうちに、思い立った今日のブログです。
小泉さんは演説で、老人でも大志を抱いてもいいでしょうと言っていました、気概ですねー人は、年齢は別にしても。
Commented by b-road at 2014-02-03 21:16
yutakaさん、ありがとう。
頑張りたいと思います。
Commented by b-road at 2014-02-03 21:18
yutakaさん、ぼくが目標なら、すぐ追い越せますよ。
そうならないように、時々後ろを見て頑張りますね。
Commented by akirasoftil at 2014-02-03 21:26
素敵な話をありがとうございます。
是非ともこれからもより一層のご活躍してください。
もっともっとセイケさんの写真を拝見したいです。
Commented by b-road at 2014-02-04 08:38
akirasoftilさん、ありがとうございます。
これからもどうぞよろしく、お願いします。
Commented by pipopapo-d at 2014-02-04 12:45
こんにちは。
昨年秋にトークショウを私の妻と一緒に拝聴しましたときに、「あのような紳士的で雰囲気のある70歳になれるかなー」とか、「まだ20年ぐらいは作品見れそうー」など語り合いすっかり魅了されました。妻はまだセイケさんの半分も経験してませんが、90までは今以上にご活発でおられると勝手に太鼓判を押しておりますので、私もそうなるといいなぁと思ってます。これからの5年間は楽しみですね。まだまだ期待しております。
Commented by Eijiro_h at 2014-02-04 18:03
いくら長生きしたとしても、人生はアッという間…。
目標となる人物との出会い、私心のない人物との出会い、
すべては、縁のなせるわざ…なのかもしれませんが、、、。
やはり、〈今ここ〉を全力で生きていらしゃる…からこその、ケ・セラ・セラなのかな〜と。
50を半ばにして、感じ入りました。(汗)
ますますのご活躍を!
Commented by うさぎカメラマン at 2014-02-04 19:48 x
50代のセイケさんにお会いした時、まさにどこの馬の骨かもしれない私に対して、写真家としての姿勢を説いて下さいました。
当時、修行中でぼろぼろの僕にとってはそのお人柄、容姿(!)ともに、一筋の光でした。
そして今も攻め続けられているセイケさんが
今も僕にとっての光であります。
どうぞ末永くお元気でいて下さい。

あ、ハチミツ持って行きますから!





Commented by b-road at 2014-02-04 20:16
pipopapo-dさん、トークショウに来ていただいていたんですね、ちょっと声を掛けていただければと思います、次は是非そうして下さいね。せっかく太鼓判をいただいたので、とりあえずこの5年間、頑張ります。
Commented by b-road at 2014-02-04 20:23
Eijiro_hさん、たしかにそうですね、人生は短いです。
大事に日々を送りたいと思いますが、それもまた難しい。
なにかにつけて、難しいものです。
コメント、ありがとうございます。
Commented by b-road at 2014-02-04 20:26
うさぎさん、ハチミツ待っています!
Commented by lentplacide at 2014-02-04 21:13 x
こんばんは。
セイケさんの写真にかける想いや姿勢は、とても70歳とは思えないほど強いものを感じます。
私もまもなく60に手が届こうとしています。趣味で始めたカメラではありますが、この記事を読んでカメラに向う気持ちや続けて行く気持ちを新たにできました。
1月3日の記事を拝見して決断し、今日、念願のM8を手に入れて試し撮りに行ってきましたが、6年も前の保障すら無いカメラであっても、選択に間違えはなかったと確信しました。
これもセイケさんのおかげです。ありがとうございました。
セイケさんの大ファンとして、今後益々のご活躍をお願いいたします。
Commented by b-road at 2014-02-04 22:03
lentplacideさん、そうですか、M8入手されたんですね!
普通はデジタルで6年前の機種というと、まったくのアウトオブデートということですが、M8は違います。
ぼくもこれから壊れるまで使うつもりですが、M8で撮れない人は他のカメラでも同じだと思います。
使うほど味が出るデジカメ、そしてライカです。
M8のユーザーが増えてうれしいです。
これからもよろしくお願いします。
Commented at 2014-02-04 23:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by arufaando at 2014-02-04 23:33 x
こんばんは。
お誕生日おめでとうございます。セイケさんのエネルギーにあやかりながら、モノクロ現像に励んでおります・・・
特にLMM現像がおもしろくなてきました。
Commented by b-road at 2014-02-05 08:26
Ryoさん、コメントありがとうございます。
カメラマガジンもご覧いただきありがとうございます。
Commented by b-road at 2014-02-05 08:31
arufaandoさん、他の人にも言われましたが、今回の記事は
ぼくの誕生日とは関係ありません!
自分の誕生日をブログで告げるような(野暮な)ことはしないですが、読み返してみると、書き方に工夫が足りなかったかなと反省しています。
Commented by see6969 at 2014-02-05 16:41
セイケさんの様な情熱を持ち続けて仕事をされる方がいらっしゃる事で、
本気でプロを目指されている方やアマチュア・趣味の方も同じく、
夢を見る事が出来るのだと思います。
また、同じ写真の世界でなくとも。。
写真とともに時を刻まれて来たのだな〜と感銘を受けました。
素敵なエピソードを拝見させて頂きありがとうございます^^
Commented by karl lager at 2014-02-05 20:33 x
こんばんは。
清家先生の作品を初めて拝見したのは1980年、帝国ホテルで
開催されたCONTAX FAIRでした。それは音声付のスライドショーで、
フランスのル・マンレースを取材したダイナミックな作品でした。カメラはCONTAX 139で、確かレースはポール・ニューマン
のチームが優勝したとコメントされていました。
これは現在の清家先生の静謐な作品群とは違う為、今では貴重な映像だったとおもいます。
ちょうどその頃、川田先生の「名画の中のヌード」という
講演会をニッコールクラブで拝聴したことがあります。
やはりこの方はテーマや被写体の選び方が独特だと感じました。
年齢の話が出ていますが、ファンとしては、清家先生、川田先生共に末永くご活躍して頂きたいと願っています。



Commented by speedstar-dhy at 2014-02-05 22:03
こんばんは。
素敵なエピソードですね。
僭越ながら、私自身がセイケさんとお会いして受けた印象の理由の一端が垣間見えた気がしています。
またこれからの5年間のセイケさんを楽しみにさせていただきたいと思います。
Commented by b-road at 2014-02-05 22:08
see6969さん、あたたかいコメントをいただき
ありがとうございます。
長い間写真をやってきましたが、いまでも写真をやってこれて、本当に良かったなー幸せだなーと感謝しています。
それもこれも先人の優れた作品や仕事に触れることができたおかげと思っています。残された時間の中で、さらに少しでも先に進むことができればと思っています。
どうぞこれからもよろしくお願いします。
Commented by b-road at 2014-02-05 22:20
karl lagerさん、ルマンの仕事は雑誌社の取材で自動車評論家の
徳大寺さんと一緒に行ったときのものです。今でもその時の取材用のプレス章が(1979)壁に掛かっています。それからコンタックス139はイギリスに置いてあります。
懐かしいです!ポールニューマンはぼくも大好きな俳優でした。特に”明日に向かって撃て”は大好きで、繰り返し繰り返し見たものですが、その彼も亡くなってしまいましたね。
スローモーションのセピアモノクロームで終わるラストシーンが忘れられません。あの映画のように人生を終わらせることができれば最高!
いただいたコメントで、いろんなことを思い出してしまいました。ありがとうございます。
Commented by b-road at 2014-02-05 22:24
speedstar-dhyさん、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
Commented by Ryo at 2014-02-06 00:05 x
セイケさんこんばんわ!
すいません、しょうもない事をお聞きしたいのですが、ケンコーのフィルターをズミタールに付ける場合、39mmのフィルターで良いのでしょうか??
セイケさんが39mmと言っていたので、ズミタールにキャップが無い事を不便に思い、買おうと思っています…………
Commented at 2014-02-06 13:12 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by funicolare at 2014-02-06 13:24
日頃からこんなことをお願いしてよいものかどうか悩んでおりましたが、ついに書くときが来たと思いペンをとりました。
結論から申し上げます。
セイケさん、70歳を節目にこれまでの写真人生とライカについての本の上梓をお願いする次第です。
我々がセイケさんを愛する大きな理由のひとつは、「写真家は作品がすべて」という凛とした立ち姿なのだと思います。
書物で書くよりも、すべては作品で!というスタンスは良く理解できているつもりですが、それでもセイケさんの写真に対する思いや情熱、レンズやボディーなどへの造詣の深さやこだわり、プリントへの熱い思い、興味深いエピソードなどなど、我々がまだまだ知らないことを多くお持ちなのは、日頃の文章からも読み取っております。
先頃のアポズミクロンの項でも、あれだけのコメントが寄せられました。
出版されれば、わたしは人生の愛読書にしますし、こちらにいらっしゃっているファンの皆様も一同にお喜びになることと想像しておりますが、いかがでしょうか?セイケさん、どうかご英断を!!
このコメントをお読みいただいたファンの皆様、ご賛同いただける方がいらっしゃいましたら、清き一票をどうかよろしくお願い申し上げます。
Commented by b-road at 2014-02-06 20:08
Ryoさん、ケンコーからズミタール用のフィルターが出ていたのですが、もしそれが手に入れば、そのレンズを抜くとそこに39ミリのフィルターでもフードでも取り付けられます。詳しくはネットで調べてみて下さい。
Commented by b-road at 2014-02-06 20:09
鍵コメさん、しばらくです!
後ほどご連絡しますので、よろしく。
Commented by b-road at 2014-02-06 20:30
funicolareさん、ありがとうございます。
たとえぼくが求めても、本を出してくれそうな出版社はありません。(売れそうもありませんから)
殆どのカメラファンは写真に特に興味があるわけでもないですし、写真に興味のある人はごくごくマイノリティーです。
それでもぼくがカメラマガジンに掲載をお願いしているのは、それはないだろうという思いがあるからです。
持っているだけで満足出来るようなカメラを作ってしまった
Leitzというブランドの罪ですかね、、、。